深夜の告白

(原題 Double Indemnity )は、ビリー・ワイルダー監督のアメリカ映画(1944年パラマウント社作品。モノクロ)。日本では1953年に公開。フィルム・ノワールの古典として現在でも高く評価される。後の多くの映画・テレビドラマに影響を与えた。

ワイルダーは、1943年に北アフリカでの戦車戦を題材にしたサスペンス映画『熱砂の秘密』(フランチョット・トーン、アン・バクスター、エリッヒ・フォン・シュトロハイムらが出演)を製作してヒットさせ、次の作品の想を練っていた。

ジェームズ・ケインの小説『倍額保険』を読んで気に入ったワイルダーは、長くコンビを組んできた脚本家チャールズ・ブラケットに「これを映画化したい」と差し出した。が、「こんな糞な話など、扱えるものか!」と、スクリューボール・コメディの優れた書き手だが根は旧式なモラリストのブラケットは、この当時としては極めてインモラルな小説の脚本化をにべもなく拒否した。

そこで映画会社と契約を結んだばかりのチャンドラーがワイルダーと組むことになった。しかし初老で気難しく、映画脚本は初挑戦のチャンドラーと、まだ30代で洒脱な性格、脚本家としては既に一流だったワイルダーは、およそ正反対のタイプで非常に折り合いが悪く、執筆は難航したという。

ともあれ、この映画にはチャンドラー得意の鮮やかな修辞と、ワイルダー流の辛辣な人物造形(および、隠し味のユーモア)が随所に見られる。 そのストーリーは、フィルム・ノワールの体現と言っても良く、破滅に直面する主人公の回想によって物語を描く、というスタイルは、フィルム・ノワールの基本手法の一つとさえなった。

ワイルダー演出、ジョン・サイツ撮影による、重苦しく不安を誘う映像には、フィルム・ノワールの典型として、ドイツ表現主義の影響が如実に見られる。夜間撮影のシーンは本作の白眉である。

原作であるジェームズ・M・ケインの小説『倍額保険』(1936)は、1928年に実際に起きた保険金殺人事件「ルース・スナイダー事件」に触発されたものといわれる。

深夜、車を蛇行させつつ保険会社のビルに乗り付けた男。彼はよろめきながら無人のオフィスにたどり着き、ディクタフォン(事務用録音機)をセットして、自らの罪の告白を始めた……

ロサンジェルスの保険会社の敏腕外交員であるウォルター・ネフ(フレッド・マクマレイ)は、顧客の実業家ディートリクスンの自宅で、美貌の後妻フィリス(バーバラ・スタンウィック)に出逢った。フィリスに誘惑されたネフは彼女と不倫の関係に陥り、結果、倍額保険金目的のディートリクスン殺しに荷担してしまう。

周到に仕組まれた殺人は単なる鉄道事故と見られ、完全に成功したと思われた。が、ネフの同僚である保険調査員バートン・キーズ(エドワード・G・ロビンソン)はこれに疑問を抱き、フィリスの身辺調査に乗り出した。

保険金も得られないままに追い詰められたネフとフィリスは、相互不信に陥った。そしてフィリスの恐るべき正体が、徐々に明らかとなって行く…。